547e126b.jpg
フリーアナウンサー・梶原しげる氏の書であったので、正直それほど期待せず手にしたのだけれど、非常に納得の好書でした。

話題が業界のものが多く、馴染みがないとあまり説得力が無い部分というのも少なからずありましたが、結局「ボキャブラリを増やさないと伝わらない」ということを本書のあらゆるところで再確認することになります。

最近の若者は、何でも「ヤバイ」です。レポート提出を忘れて「ヤバイ!」、友達との待ち合わせに遅れて「ヤバイ!」、カワイイ彼女を見かけて「ヤバイ!」、美味しいものを食べて「ヤバイ!」、前々から探していたものを店頭で見つけて「ヤバイ!」、お気に入りの音楽を聴いて「ヤバイ!」、帰宅時間が遅くなって親に怒られそうになり「ヤバイ!」、深夜起きてて「ヤバイ!」…

「ヤバイ」というのは、そんな多義語でしたっけ?(笑) しまいには「ヤバっ!」 「い」まで言い切れないというのだから呆れます。これじゃ、ちゃんと伝えたい時も、多様な、かつ適切な表現が出来ないので、自分の気持ちが正しく相手に伝わるかどうかも分かりません。

たとえば最も自分の言葉を伝えなければいけない場面、プロポーズなどでも、「あのー、おれぇー、おめーといると、マジ、ヤバイって感じでぇ、だからぁ、結婚してほしーっていうかぁ〜、マジ、最高だから、オマエといると、マジ、ヤバいっしょ! てか、オレ、ヤバクね?ヤバクね? オレ、こんなマジで、カッコよすぎじゃね?…」(以下永遠に続くので省略)

プロポーズなんて場面でこの程度のボキャブラリしかなかったら、彼女伝わらない考えるべきでしょう… このプロポーズで、まともな女性がOKを出すとは思えません。

だって、最も大切な言葉が「ヤバイ」ですからね。最悪です。感動や自分の気持ちを伝えるためには、多くの言葉が必要となるのです。意外に難しいのが「感動伝達力」だと本書では言われていますが、確かに確かに。その通りだと思います。

もう一つ。タイトル通り、「即答」するやつはやはりバカに見える、確かにコレもいえることです。「そこじゃないだろ?」というタイミングで相槌を打ってくる人など、あまり頭がよいとは思えません。無駄に返事をしたり、相槌の回数がやたらに多かったり。

また、お願いごとをすると、「ムリっす」といきなりきたり、「いや、やりたくないっす」と来たり。何様だろうと思いつつも、こちらが大人になって、「あのね…」と諭すと、まぁたいていの場合収まるのですが、でも「あんま頭よくないなぁ…」と思います。返事が無いのも困りものですが、即答と言うか、「性急」というか、せっかちというか… 何でもとりあえず答えてしまうような人は、「バカ」に見えるのですね。

「譲歩」や「間」というものをしっかり身に付けて、相手に嫌な印象を持たせることなく自分の思いを正確に伝える「技術」を身に付けてほしいと思います。若い世代は、本当に「必要最低限の情報のみで生きることが正しい」と習ってきていますし、それをしっかりと身に付けています。知識は、「出来れば知りたくない」のが基本。限界まで省エネで生きることが善。そんな世代です。

そんな彼らが今まで全く気にしてこなかった、喋りや意思伝達の技術を身に付けるべきであるということを本書は遠まわしに言っている気がします。

まず、本書を読んでから、様々な本を読んでみると、自分の愚かさも含めて多面的に自分を見ることができるようになるでしょう。