私は幼いころ、母の出産とその後の入院で親元を離れ、祖父母の家に預けられていたことがありました。わずか1年足らずなのですが、あの頃の記憶は今でも鮮明に思い出すことがあります。幼い私には、よほど強烈な出来事だったのでしょう。

 そんなことから、実は「母子モノ」「待ちモノ」のストーリーにはメチャクチャ涙もろい体の構造をしています(笑) 切なくなるほど何かを探し求めるストーリーや、長年恋焦がれて待ち続けた結果、ようやく出会えた…なんて話は、私の周囲に池が出来るくらいです。

 さて、JRが東北新幹線全線開業のCMを流しています。はやぶさ号のデビューは来春らしいですが、12月から八戸〜新青森間が開業し、東北新幹線はフル規格で全線が開業となります。あのCM、ご覧になっていますか?

http://www.jreast.co.jp/myfirstaomori/cm/index.html

第一話 http://www.jreast.co.jp/myfirstaomori/cm/doramacm/tokyo_30s.html
第二話 http://www.jreast.co.jp/myfirstaomori/cm/doramacm/koi_30s.html
第三話 http://www.jreast.co.jp/myfirstaomori/cm/doramacm/nebuta_30s.html
第四話 http://www.jreast.co.jp/myfirstaomori/cm/doramacm/izakaya_30s.html
第五話 http://www.jreast.co.jp/myfirstaomori/cm/doramacm/shinaomorieki_30s.html

 私はこの第五話で、かなりウルウルと来てしまいました。みなさん、これあまり分かってないみたいですね… 

 このストーリーが秀逸なのは、青森県民の悲願をサラリと比喩的に表しているところと、最後の最後で伏線が分かるという、まぁ私の大好きなパターンであるところでしょうか。

 無粋ながら解説しますが、第五話で、吉幾三扮するベテラン駅員が、新青森駅に着任し、駅長にあいさつに来た元同僚の新米社員にこう声を掛けます。

 「トーキョー!やっと来たか。」

 みんなこれに気付いてないようですね(少なくとも私の周囲には気付いている人がいませんでした) 

 「トーキョー!やっと来たか。」

 これは、やっと東京に新幹線がつながったか、つまり「東京!やっと来たか」であって、東北新幹線全線開業という青森県民の悲願をこの一言に凝集させたものなのです。

 つまり、一連のストーリーはこの「東京!やっと来たか。」から始まっているのです。この一言につながる為にストーリーは出来ている、いや、この言葉ありきでストーリーが作られているといっても過言ではないのです。

 すると、ここで分かるでしょう。なぜこのベテラン社員が人を「出身地」で呼ぶクセを持っているのか。そしてこの新米社員が「トーキョー」である必然性があるのか。この新米社員は、オーサカやキョート、サッポロじゃダメなんです。トーキョーでなくてはならないのです。

 「トーキョー!やっと来たか。」

 青森県民の悲願を考えると、実に感慨深い、ジーンと来る言葉です。いやはや、やられました。なかなか心に残るCMです。

 これまた無粋ですが、今年の時事問題は尖閣や北方領土に関する領土問題と共に、この新幹線開業は話題になるでしょう。九州新幹線も開業し、新青森〜鹿児島中央が新幹線で結ばれるのですから。要注意です!