ある友人から、なかなか声を発しない生徒のことを相談されました。人としゃべれない子。大変だなぁ…

 そういえば、どうしたかなぁ…と思い出す子がいました。かつて、入会面談で怒鳴り飛ばした子が2人いました。一人は高3の子で、お母さんに連れられて来た感じ。何故ウチに来たのかは分かりませんが、とにかくお母さんはウチしかないと、頼み込む感じでした。ところが、あろうことか、面談中息子は居眠りを…(笑) いやぁ、怒鳴り飛ばしましたね。二度と来るなと(笑)

 しかし、お母さんに懇願されてしまい、私はその甘さが気に入らなかったので、明日以降、本人一人で申し込みに来れたら許可すると言いました。翌日彼は一人で来たので、仕方なく入会させました。「それでも一人で来たか…」

 話はこれで終わりません。オチがね、オチが。

 申し込みが終わり、帰っていく彼と、ウチの生徒がすれ違いました。
 「昨日の子、来たんですね」と。
 「まぁ、一人で来たら…って約束したからね」と私。
 「でも、すぐそこにお母さんが来てましたよ…」

 チャンチャン!

 もう、10年ほど前ですかね。彼もいい大人になっているはず。どうしたかなぁ…

 もう一人は、数年前。
 やはり、入会面談で一切話が出来ません。しかも、本人はうつむいているか、時々上目づかいににらむかしか出来ません。

 専門家だと、何とかの症状だとかなんだとか言うんでしょうが、私は普通の常識に照らし合わせてしかものは考えられません。ハッキリ言って、オマエはムカツクと、正直に言いました。だって、初めて会ったのに、いきなりシカト&ニラミですから。

 ふつう、そんなことしちゃいけませんよ。あいさつすら出来ません。こんばんはとも言えません。たとえば、何かどうしてもそういうことが出来ない障害などを先天的に持っているとかね、そうなら仕方ありません。理解出来ますが、何も悪いところがなく、何も理由もなく睨まれる側になってみてくださいよ。

 ところが、その子は驚いた表情をしました。大人に、ムカツク、嫌い、フザケンナと言われたことが無かったのかもしれません。大人がそんなこと言うのか…くらいの表情でした。知らんがな…

 お母さんは結構切羽詰まっていましたから、救ってあげたかったのですが、どうしてもね、私も好き嫌いで仕事をしているもので(笑)、どうしてもダメでした。でも、ふと今日思いだしました… どーしたかなぁ…

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 こういう仕事をしていると、「教育者としてふさわしくない」「偽善者だ」「専門家でもないくせに」ということを言い出す人がいます。まぁ、それぞれの方がそれぞれ異なる意見と異なる感想を持つ自由はありますから、好きにすればいいのですが(私がそんな対象になっているというわけではないのですが)、そもそも、教育が普遍的で、誰にでも公平で、だれもが受けられるサービスだと思っていること自体が間違いであることを、誰も指摘しないのは恐ろしいことですね。

 Aという先生が「とんでもない奴だ」という人も居れば、「神様だ」という人もいるのです。全員に好かれる、全員にいいと言われる存在があるとすれば、それは実に空虚かつ浅薄な存在であるか、または形而上の存在であるのでしょう。つまりですね、あり得ないということです(笑)

 名古屋の熱血おばちゃんのことを思い出しましたが、あれを「やりすぎだ」と批判する人、「かえって引きこもりがひどくなった」と訴える人がいるでしょう。でも、確実に救った人間もいるんです。万能で、全能な人間などいません。確かにもう少しやり方を慎重にすべきでしょうが、確実に誰かを救ったのです。


 偽善者は、たとえ偽善でも、「善」を働いているだけマシです。最悪なのは、「偽善だ」と批判するだけして、自分では何もしない人間。ゼロの人間より、偽善者の方がまだ上であることを認識すべきですが、どうもゼロの人間のほうが偉そうに見えるから厄介です。頭でっかちが言葉だけで何を言おうと、実践している人間にはかなわないのですが… 安易な批判が多いのも事実ですね。

 私も、私という大きさ以上の人間にはなれません。また、過大に評価される事に対し、恐れを感じます。以前、キャラが独り歩きしてとてつもない恐怖を感じたことが何度かありますから。今は「THE等身大」でしか生きられません。

 ゆえに、子どもにも保護者にも、誰にでも「等身大」でいるよう心がけています。だから、むかつけば「ムカツク」と言い、嫌いなものは嫌いと言う。親兄弟のように、家庭のことも、自分たちの人生のことも、いろいろ話します。間違っていることは間違っていると言います。

 ですから、前出の通り、初めて会った人をにらみつけたり、人の質問をシカトしたりする子はダメって言います。普通だと思うんですけどね(笑)

 これは幼いころからの躾だと思います。
 私も父母にものすごい勢いで張り倒されたことなど何度もあります。「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣いて謝ったこともあります。裸で庭に放り出されたこともあったなぁ…(笑) 生意気な口を利いたり、人に失礼なことをしたりしたら、まぁ、ただでは済まなかった記憶があります。もちろん幼い頃ですよ。

 ゆえに、最低限の礼儀は身に付けた気がします。「こういうことは失礼にあたる」と体が理解していますね。きちんとそういうことが出来ている子もいます。親御さんの躾がしっかりしているな…と感じる子はたくさんいます。ですから、最近の傾向云々じゃないのですが、それが出来ない子は、子どもが悪いわけじゃないですよね。やはり親が教えるべき時に教えていなかったりするのでは?と感じます。

 大人になってからじゃ遅いのです。やはり幼いころ。
 改めて躾の大切さを感じましたし、ふと両親に感謝する瞬間がありました。