以前、某協会の委員をしていたこともあって、S国際高校という学校にお世話になり通信制高校のサポート校に関わっていたことがありました。ずいぶん昔のことです。

 不登校の子というのは、あの当時は結構「特殊」なことでした。「誰にでも起こりうること」というとらえ方を皆さんが啓蒙していた頃でしたが、それでも「特殊」なケース。本当にいろいろなケースがあって、専門的な知識を必要としていたので、難しいなぁ…と感じていたのを覚えています。

 結局、少しやってみたのですが、私たちでは難しいと判断し、サポート校運営は撤退しました。我々も知識がありませんでしたし、それよりも先にやるべきことがあると判断したためです。

 しかし、時代は変わって、また同じような話を頂きました。基本的に「頂いた話には乗らない」と心に誓っている私ですので、まぁ、残念ながら「やりたいと思ってこちらから探した話」ではないので、よく考えつつも見送ろうかと思っていた矢先に、ある子から転校の相談を受けました。そういえば、つい最近も、中学校から高校へ進学せずにいるのだが、サポート指導をしてもらえるかと言う問い合わせがあったばかり。

 困っている子が結構多いのでしょうか。需要があるということなんでしょうか。

 都内のある高校の学習センターには200名もの生徒がいると聞きました。すごことですね。しかし、こんなにも高校から何らかの事情でドロップアウトしてしまう子がいるというのも、目をそむけてはいけない事実なんだと思います。

 ただ、私としては複雑です。

 不登校になったり、高校を辞めて転校する。
 何も辛いのを我慢して3年間過ごす必要など無いと思います。思った通りにやればいいじゃないか、そうも思うのです。
 が、反面、どんな世界でも辛いことはありますし、面倒くさい場面には出くわしますし、アタマ悪い人間は存在します。自分にとって利となる人間ばかりではなく、害悪としか思えないような人間も存在します。

 まぁ、それが世の中ってものです。そうですよね。

 ですから、無菌室で育てちゃいかんとは思うのです。雑菌だらけの世の中で、元気に生きていける力を養わなければいけないとも思うのです。ですから、生徒自身でちゃんと適応能力も身に着けなければいけませんし、考えさせなきゃいけないとも考えます。じゃないと、ずーっと心配ですから。どこへ行っても同じことを繰り返すことになります。

 今いる場所を変えれば事態は好転する。そういうプラスイメージしか持たないでいると、結局新しい場所でも同じ事態を招きます。結局、変わらないんです。どこへ行っても。

 私は、カールブッセのこの詩が非常に好きなんです。

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山のあなた     カール・ブッセ(上田敏訳 『海潮音』より)

 山のあなたの空遠く
「幸ひ」住むと人のいふ。
ああ、われひとととめゆきて、
涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く
「幸ひ」住むと人のいふ。

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 幸せは、山の向こうにあると言われて探しに行くのですが、結局涙を流して帰ってくる。山のもっと向こうに幸せがあるんだと人は言うんですね。同じこと。ココではなく、向こうに幸せがあると思って探しに行っても、無いんですね。ココに無いものは、向こうにもない。
 
 通信制高校だから「楽」だ、「自由だ」といううたい文句をよく目にします。ちょっとググればたくさん出てくるものですね。しかし、そんなに楽ちんで、そんなに自由なら、なぜみんなこういう学校に行かないのでしょう? それは、それなりに理由があるように思います。各自がじっくり考えればいいことなんでしょうが。

 義を見てせざるは何とやらと申しますが、それなりの正義感は私にはあります。が、それだけじゃ動けない自分もいます。もう少しまともな見識を持った自分であれば飛びついたのかもしれません。しかし、ブッセの詩の通りです。これは私の人生にも当てはまります。「幸ひ」は、遠くにはないのでしょう。足元をもっと見なければいけないような気がします。

 しかし、私の手で救えない子がいるのは本当に悲しいことです。我が事のように凹みますし、悲しく思います。何だよ?イジメって…

 本当に下らない、下賤なバカが存在するんだと知りました。腹立たしいったらありゃしない。しかも、そうやって手を出す子が、仕返しされないという前提で物事を考えていることがとても腹立たしいのです。反撃出来ない子だと分かっているからいじめる。人間の中では最低の部類に属するでしょうね。

 私はそう人間が出来てませんし、私も下賤な人間ですから、やられたらやり返すのが当然だと思っていますし、徹底的に大事にしてやるのが私のやり方なんですが、そういうことが出来ない人も多いのですね。

 複雑な事情を抱えた子を救ってあげたいとは思いますが、その力が無い自分をとても悔やみます。ごめんな、みんな、助けてあげられなくて… 話を聞いて、少しでもアドバイスをしてあげられるようになりたいと、いまさらながら思っています。