人と待ち合わせをする時、

「まず、根津駅へ行って下さい。切符売場へ行ったら、右から2番目の券売機で、190円の切符を買い、改札階のホームの電車の10両目に乗り、5つ目の駅で降りて下さい。そこで待ってます。」

こう指示されたら、その通りしますよね。きっと確実に出会うことが出来るでしょう。
しかし、こんな風に指示をするというのは、相手が地元の人間ではない(例えば全く事情に疎い関西の方とかの)場合、もしくは極端に交通に不慣れな方の場合、さらに言えば、幼い子どもでしょう。ちょっととらえ方を変えると、「バカにしてるんじゃないだろうか」とさえ思います。

本来であれば、
「根津駅から(連絡切符ではなく)東京メトロの切符を買って、代々木上原方面の電車の最後尾に乗って日比谷で降りて下さい。そこで会いましょう。確か料金は190円だったかな?」

と言えば済むはずです。これでもかなり丁寧ですね。
なぜ最初の指示が良くないのかと言えば、これは単に「手順」を教えているにすぎないからです。

「右から2番目の券売機で、190円の切符を買い」
という手順も、他社連絡きっぷではないメトロ用の切符を買えという意図が伝わりません。
「改札階のホームの電車の10両目に乗り」
も、どっち方面の電車なのか、何行きなのか、なぜ改札階のホームなのか。
「5つ目の駅で降りて下さい」
も、その駅はどこなのか。
こういうものごとの「本質」(と呼ぶほどのことじゃありませんが(笑))を伝えず、単に手順だけを教えるというのは、人を馬鹿にしてるようにも取れますし、成長や学習にもつながらないものです。

というのは、では、この人の乗車駅が日暮里駅になったらどうなるか、ということなんです。
この場合、日暮里駅での手順を全部、イチから教えなければいけなくなります。
「千代田線の日比谷駅の、代々木上原方面行き電車の最後尾で待っている」
という本質さえつかめていれば、何番目の券売機で切符を買い、何番線の電車に乗り、どこで乗り換えて目的地に着けばいいかを「考える」ことが出来ます。また、そのくらいの「知恵」は、生きていく上でつけてもらわねばいけません。

さて。
何でこんなことを言い出したかと言えば、昨今の子ども達の学習を見ていく上で、前者のような「手順を覚える」ということが「学習」だと思っている子、またそう習っている子が非常に多いと感じるからなのです。小学生に算数などを教えていると、本当にこれを感じます。

例えば、

□÷5=2…1

□は11だと答えが出ます。意味合いも教えながら、どうしてそうなるかを紐解きながら、5×2+1で答えになると説明します。しかし、これを「面倒な説明はともかく、『答え×割る数+あまり』で正解が出る」としかとらえない子が多いんですね。「こうすればいいんでしょ?」というような子です。分かった! よし! もう大丈夫です。じゃぁ、問題をやってみよう。

13÷□=6…1

「先生、これはどうやるんですか?」
といきなり聞く子がいます。
「6×13+1=79」
と答える子もいます。
聞き方を変えられたら分からなくなったり、目の前の数字を操作するだけだと思っていたりするんですね。これは、根津駅での手順は分かるけど、日暮里になったら分からない…という例と、本当に似ていると思うのです。これじゃぁ、何の勉強にもならないし、個別の手順を暗記することには何の意味もありません。本質を学ぶことが「学習」なのであって、「この場合はこう、あの場合はああ」と、個別のケースを学んでいたら、一体どれだけの情報量を記憶せねばならないのでしょうか?

また、個別ケースを全部覚えなければいけないのだと勘違いして、
「勉強って大変!」
「そんなに覚えられない」
などと学習から逃避する子も中にはいます。そうじゃないし、そんなんじゃダメなんですが、本当にそれが「学習だ」と信じてきたという子も少なくありません。桜学舎でそれを否定され、初めて目が開けたという子も何人もいます。私達からすれば驚きなんですが、これが現代っ子なんでしょうか。

「はぁ?何言ってんの、オマエ!?」
と私に言われる子、時々いますね。私もストレートに言ってしまう方なので、
「バッカじゃなーい?(笑)」
と言われちゃう子もいます。言われた方からすれば、ガーンという感じでしょう。まぁ、そんな傷つけるような言い方をするわけじゃありませんが、時にはそんなふうに言ってやることもあります。

否定された経験も、恥をかいた経験も無く、大事に大事に無菌状態で育てられた子は成長がありませんし、大きく自分を変えることが出来ません。いつまでも同じ間違いを繰り返しています。間違った勉強は、100万年繰り返しても成長はゼロです。

手順を覚えるな。
口を酸っぱくして私が言い続けていることです。
仕組み、意味を理解して、その上でやり方を身に着け、それを記憶する。
仕組みも分からず、「そういうことか!」と理解もせず、手順だけ覚えても、ハッキリ言って無意味。
そんな勉強を繰り返す時間は、無駄です。
反復学習は「劇薬」だと、私は15年以上前から言い続けています。
計算プリントやら、〇マス計算やら、いろいろ流行がありましたが、それらは全て「本質」ではありません。そして、本当に重要な「本質」を学ぶ学習法は流行しません(笑)

お子さんが手順だけを記憶していないか。
ご家庭でも気を付けてみてください。