私は食べることが特に好きだという訳ではありませんが、当たり前かもしれませんが美味いものは好きです。食は「文化」であって、人間が作り出した文化の中ではかなり上位に位置するものだとも思います。

 食は楽しみであり、また成長の糧・栄養素でもありますから、特に子どもの時期はしっかりとした食事をさせることも重要です。
 子どもの時期の食生活は、20〜30代に響き、20〜30代の食事は40〜50代に響くと言われます。空腹を満たすだけの食生活は、将来の成人病を誘発しますし、当然成長にも大いに影響を与えます。

 また、公立中高一貫校の問題などをみても、常識的な家庭科、または食文化についての設問なども見られます。学校生活であれば。給食も単なる食事時間ではなく、「食育」の時間であり、食についての栄養学的、また文化的な学習時間でもあります。

 文化的側面からいえば、食はその地方の文化を色濃く反映しているもので、地域性、民俗性、地方の慣習なども食から学ぶことが出来ます。

 先日、小学生の授業で鰻の話題になりました。ふと聞いてみると、何と鰻を食べたことがないという子が何人もいました。昨今鰻は高騰し、我々大人もそうやすやすと口に入れることが出来なくなってきていますが、それでも「食べたことがない」という子が何人もいたので少々ビックリしました。

 確かに、私も小学生の頃は鰻がそれほど美味しいものだとは感じませんでしたし、ありがたみも分かりませんでした。しかし、それとこれとは別問題。文化性の問題として知っておく必要があることです。
 たとえば、ご存知のことだとは思いますが、関西と関東では鰻の開き方が違います。関東は背開き。武家社会であったため、腹を切るのは切腹を連想させ、縁起が悪いとされました。逆に関西は腹開き。商人社会なので、「腹を割って話す」ということだったと言われます。

 また、関東は鰻丼ですが、関西はまむし。鰻が2層になっています。そのほか、中京は「ひつまぶし」であったり、鰻の生態はまだ謎が多かったり、鰻の血には毒があり、加熱すると解毒されるとか、関東では蒸してから蒲焼にするとか、汽水域に生息するなどなど、様々な文化的・知識的要素があります。分からないと困ることも、また勉強が面白くならないこともあるでしょう。

 毎年、合宿で生徒をお預かりすると、こういう面でもいろいろなことが分かってきます。毎年いるのは、ご飯(ライス)ばかり食べておかずをかなり残す子。私はいつもこういう子のそばに行き、「ハイ何食べろ、次はこれ食べろ」と指示を出し、かなり片付けさせます。よく見ているととにかくバランスが悪い。汁物を飲まずに食べていたり、一皿ずつ集中攻撃していたり… また、見たことがないもの、食べたことがないものを「残す」「手を付けない」子もかなり多くいます。こういう場合は、どんなもので、どんな味がして、美味しいのかそうでないのかをきちんと説明して、「食べてみな?」と言いますが、たいてい「美味しかった…」となります。やはり、「経験」させることの重要さを感じる瞬間です。

 フルーツが食べられない子も、意外に多くいます。アレルギーは仕方ありませんが、食べたくない、好きじゃない、美味しくない…という理由がほとんど。野菜は意外にも食べられない子は少ないですが、それでもトマトの不人気ぶりは、トマトが可哀想になるくらいです。

 現在、小中学校でも「食育」が見直されています。私の叔父も外資系の日本支社長を退職後、東久留米市で畑を作り、地元の小学校で食育を教え、「畑の先生」と呼ばれているそうです。食は旅の目的にもなるでしょうから、食を大切にすることは、人生を豊かにすることになるでしょう。

 その昔、かの「ホリエモン」は、「借金しても美味い物を食え」と言っていましたが、これは真実。贅沢をしろということではなく、「経験を買え」ということなのです。是非食は大切にして頂きたいと思います。