かれこれ1週間以上、我が家に犬がいます。
先日お知らせした、吉田の実家の犬「ふく」です。2月に母が亡くなり、一人暮らしとなってしまった父の手術(明日無事退院となりました)の間、窮屈な東京のマンション暮らしとなった「ふく」。

私たちも新居に彼をいきなり放置出来ず、先週は毎日私たちと出勤し、事務所でおとなしくさせていましたが、彼もようやく東京暮らしに慣れてきたようで、短時間のお留守番は出来るようになりました。私たちも自分たちの責任でペットを飼ったことがありませんでしたので気が気じゃなかったのですが、少しずつですが要領を得てきました。

この歳になって新しいことをするのは結構しんどいものですが、犬の飼い方や病気のことなどをググったり人に聞いたり専門家を訪ねたりして、とにかく「学習」しました。彼が来なければ、犬の飼い方など勉強しなかったでしょう。また一つ「勉強になった」と思って頑張っています(笑)

吉田の実家にいたころは、私が訪れても、彼の中のランキングでは私が最下位。ですから、私のいうことなど聞きませんし、都合のいい時だけ遊んでもらおうとやってきます。一番偉いのは「お父さん」、次が「お姉ちゃん」で、時々来る「弟君」が3番目、つぎが「ふく」で最後が私という序列だったように思いますが、我が家に来て、彼は私の言うことをよく聞きます。ダメと言えばあきらめ、寝ろと言えば寝ますし、こんなに従順だったかしら?と思うほど。この家で誰が一番偉いのかというのを察する力はあるんでしょうね。今では私の後をついて回っています。吉田の言うことは私の次になっているようです。

さて、先日。
彼のトイレ当番の私。朝、「いくぞ!」とマンションから連れ出し、近所でトイレをしに行かせると、ちょうどその日は雨。彼は雨が嫌いなのです。致し方なかったのでしょう、近くの木の根元で片足を上げ、最低限の用事だけを済ませると、一目散でマンションの入り口へ。

「オイ、まだウ○チしてないだろ? ほれ、ふく!」
と声をかけ、リードを引っ張っても動きません。それどころか、何とベタっと地面に張り付き、意地でも動きませんという態度。いくら引っ張っても、あごの下まで地面にくっつけて抵抗しています。
嫌だってことなんでしょうね?
「しないのね? じゃ、我慢しなさいよ!」
と諭して、マンションのドアを開けると、ダッシュ!次の扉の前ではだっこしろと。共有部分は抱くのがルールなので、重たい彼を抱きかかえて帰宅。

首輪をハーネスに変えてあげた時もそうです。首輪じゃ痛いだろう、苦しいだろうと思って、楽なハーネスに変えてあげたら、またまたこの態度。全面寝そべり、あごまで床に着けて抵抗。上目使いにこちらを見る姿が笑えてしまうのですが、とにかく徹底抵抗なのです。首輪に付け替えてあげると、喜び勇んでダッシュ! まったく…

でも、彼を1週間見ていて、こんな小さい動物にも「意志がある」というのは素晴らしいなぁと感じました。ああしたい、こうしたいときちんと意志を持って行動しているのだということ、それを私たちに伝えようとしているということが、とても尊い気がしてきました。

彼と過ごして、私も気持ちに少し変化がありました。
小さいもの、幼いものに対する寛容の心が、以前より広がった気がします。なかなか分かってもらえない子と同じ。「何べん言わせればわかるんだ!」と思うこともありましたが、分からないことを、繰り返し、根気強く教えていくということも大切なんだなぁ…と、改めて彼に教えられた気がします。

夫婦二人だけで暮らしていると、お互い大人ですからつい「分かり合えてしまうこと」があります。お互い自立した人間ですから、それほど相手を心配することもありません。しかし、人間でも、動物でも、幼いもの、小さきものを「育てる」という行為をしていると、おのずと「慈しみ」の心が生まれますし、誰かのために生きるということの大切さを知ることになるのでしょう。

小さなものにも意志がある。
これほど素晴らしいことはありません。もちろん、犬にさえ意志があるのですから、人間の子供にもちゃんと意志があります。それにきちんと向き合って、じっくり聞いてあげること、受け止めてあげることの大切さを改めて感じました。