私はマーケティングというものを、今や雲の上の人となってしまった神田昌典氏に学びました。ダイレクトレスポンス・マーケティングという手法を提唱していた神田先生は、あの当時零細企業の救世主のような方でした。世に広く知られるようになり、今や神田氏は雲上の人ですが、初期の「顧客獲得実践会」全国3000社の一つだった私の会社。やはり彼は私の「先生」であることは間違いありません。

 後に、他の業種でも、またまた塾業界でも彼の二番煎じというか、そのままパクりみたいなコンサルタントが雨後の筍のように出てきました。ものの見事に神田氏のパクりなので、私もかなり多くの書籍を読みましたが、結局「知っていること」「神田氏から学んだこと」ばかりで辟易としたものです。もちろんヒントになるものは多く、神田氏から学んだことをどう生かすかという面においては、つまり神田氏のマーケティング理論を「解釈」するには役立った物が多くありましたが、結局「知ってるよ、そんなこと…」という内容がほとんどの書籍を読む羽目になり、1冊の書籍から学ぶ量はとても少ないものでした。

 そんな1冊ですから、正直これも私が読むべきものではなかったな…というのが感想です。知ってるよそんなこと… という内容ばかり。しかし、それはあくまで私にとってというお話であり、では世間の方々や学生は知っているかと言えば、きっと「目からうろこ」なのだと思います。

 そうです、このような「商売の仕組み」「マーケティング」というのは、とにかく皆さんが本当に知らない世界。私は幸か不幸か大学卒業後の数年のサラリーマン生活以外は「商売」をするようになってしまったので、生きるために必要な知識としてこういうものを学習せざるを得ませんでしたが、普通の人はあまり気にせずとも生きていける内容なのかもしれませんね。

 ただ、世の仕組みとして、こういうことを子どもに教えおいてもいいのかなぁと思います。私の友人には飲食業に携わったり詳しかったりする人が多いのですが、彼らから聞かされる話は衝撃的です。たとえばラーメン屋さんの原価率とか(笑) そうなのか… 確かに儲かるなぁと。

 しかし、子どもたちにそんな話をすると、「ボッタクリだ」と言います。私は笑い飛ばしますが、それが普通の感覚なのかなとも思います。世の中の物の値段には、必ず利益が加わっていますし、利益が無ければ一体仕事をする人の給料は一体どこから出るのでしょうか? そういう理屈をあまり感覚的に理解していないのですね。実はそのような仕組みを解説してあげると、子どもたちは食いついてきます。かつては商売に興味を持つ子もいました。


 原価率を下げ、売上を上げることが商売の基本なのでしょう。利益率を高めることで、会社の財政は豊かになりますから、利潤追求が全ての会社の究極の目的であるのですから、利益の出ない会社はその体をなしていないことになります。

 ゆえに、原価率が高い商品はとても良心的であるという理解も出来ます。売値が高いことが高価なのではなく、原価率が高いものが良い商品、高価な商品なのだともとらえることが出来ます。


 また、同じ商品でも付加価値によって高額商品にもなれば、叩き売らなければ売れない商品にもなります。他と違う商品などなかなかありません。ですから似たような商品を仕入れ、付加価値を付けながら売っていくというのも商売の基本です。

 これは我々の業界は正にそうです。授業内容は他塾と異なるものを売るわけにはいきません。他塾では方程式を教えているけれども、ウチでは普通じゃない方程式を教えますよ…というのでは困ります(笑) ですから、「商品」という部分での差別化は一切出来ない難しい業界です。ですから、授業の分かりやすさ、楽しさ、塾としてのあたたかさ、生徒ケアなどなど、付加価値を付けて差別化を図り、他とは異なる価値を見出していただくしかないのです。

 改めて振り返ってみると、桜学舎は大変「原価率」の高い塾です。少なくとも大手塾と比較するならば、授業料が1〜2割程安めの設定で、原価、つまり講師に支払うお給料は大手の1〜3割増し。利潤追求の企業としては「劣等生」です(笑) しかし、だからこそ私が見ても優秀だと思える講師が数多くいて、毎年多くの生徒に通っていただいて、卒業生も訪ねて来たりする雰囲気がある… そんな塾になっている気がします。クオリティや本質という面にこだわっているからなのでしょう。ゆえに儲かりませんが(笑)

 しかし、良い商品と付加価値をご提供して、地域の数多くのご家庭から選んで頂けるように努力を続けていきたいと思います。改めて考えさせられたという点では、私にも役立つ本だった…と解釈すれば、1,050円も自己投資を考えることが出来る本でした。


 まぁ、また桜学舎文庫行きですね(笑)

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