受験生が親に言ってはいけないことがあります。というか、これはどんな子でも親に言っちゃいけないことなのですが、定番の罵声は、

「生んでくれなんて頼んだ覚えはない」

ということです。

 確かに、子は親を選べませんから、理不尽だと思うこともたくさんあります。しかし、親が産んでくれなきゃ自分の今が無いわけで、つまり「生んで欲しいなんて言ってない」と言い放つことは、つまり今の自分を否定していることになります。これは言っちゃいけないことですね。

 その昔私はこれを親に言って、裸で庭に締め出された経験があります。この年になってまで覚えているのですから強烈だったのでしょうね。「生んでくれなんて頼んだ覚えはない」というようなことを言ったのでしょうね。父は、ならば出ていけと、そしてオマエのものなど何一つないのだから、全部脱いで出ていけ」と言い、窓枠にしがみつく私を蹴りだして庭に叩き出しました。普段は柔和で穏やかな父ですが、怒らせたら怖い人でした。私の言いぐさはよほど腹に据えかねたのでしょう。庭に放り出された私は「お父さんごめんなさい」と号泣して、しばらくして勝手口から母に家の中に入れてもらった… ああ、今でも昨日のように覚えていますね。以来、これだけは口にしませんでした。懲りたんでしょう。でも、今では、生意気な私にはいい教育だったと思っています。

 じゃあ、逆に親が受験生(子ども)に言ってはいけないことは何でしょうか?

 生徒から愚痴られる話題のベスト3というのがあります。

 嵎拔しないなら塾やめろ」
◆屬Δ舛鷲亘海覆鵑世ら都立[国立]しか行けない」
「私の方がよほど勉強した」

というものです。言っちゃってませんか?(笑)

 「勉強しないから塾の回数を増やす」と言うなら分かります。もっと言えば、「お宅の塾じゃ勉強しないから塾を替える」と言われれば納得が行きます。

 しかし、「勉強しないから、勉強自体をやめてしまえ」という理屈は全然分かりません。分かりませんが、そういう理由で桜学舎を去って行った人は何人かいます。親御さんの気持ちも分からなくはないですが、そう言っちゃったら、子どもは天国ですよね。数年後、残念だなぁと思うことも何度かありました。

「うちは貧乏なんだから都立[国立]しか行けない」

というのも、どこまで本当だか…ということなのですが、これは毎年のように生徒の相談事として持ち込まれます。「少なくとも桜学舎に来れている家で、私立は無理って家は無いと思うよ…」と答えるようにしていますが、生徒にとってはこれが一番厳しい言葉のようです。

 しかし、私の25年の塾生活において、この言葉で奮起し、好成績で国公立の高校・大学へ進学した生徒は見たことがありません。ですから、これは残念ながらいたずらに生徒へプレッシャーを与え、不安に陥らせるだけの言葉だと私は定義づけています。もちろん経済的な理由で出来ることと出来ないことを子どもに正直に伝えることは大切なことだと思います。それを理解させ、納得させることも重要な「教育」です。

 しかし、受験生、特に男子生徒は、「うちは貧乏なんだから都立[国立]しか行けない」という言葉を聞き、一気にモチベーションが下がり、投げやりになります。「どうせやったって、ウチは都立しか行けないし…」「都立しか受けないから、2ランク3ランク下の学校しか受けられないし…」 そんな風に捨て鉢になり、勉強しなくなるのが関の山です。

 「金のことは子どもが心配することじゃない」
 「余計なことを心配せず、まず自分がやれることを一生懸命やりなさい」

と、ドンと構えているご家庭に成功事例が多いのも事実。優秀な子のご家庭は、明るく、おおらかで、楽天家であることが多いものです。神経質過ぎると特に男の子は潰れていきます。