都立高校推薦入試対策「集団討論」直前練習会が来週に迫りました。
毎年実施している練習会も、毎年精度が上がり、だんだん様子がわかって来たというのが本当のところ。ただ、この練習会を通して感じたのは、「都立高校の全部の入試に導入しても良いくらい有意義」だということでした。とにかく子どもたちの成長が目に見えること、そして確実にいろいろなことを考えるようになること、さらには意欲的になっていくことが目の前でわかるのは「感動」に近いものがあります。良い「学習機会」を与えることで、子ども達はいろいろなことを学びとっていくのだなぁと感じます。

ところが、
「都立の推薦入試は枠が小さいし、試験も方法が全然違うから受けない方がいい」「落ちて凹む子が多いので、受験しない」
という方もいるようで、実際、そう言われたという桜学舎の生徒も毎年います。もちろんそれは各ご家庭の判断に任せるしかありませんが、受験を人生の選択機会の一つ、教育・学習機会の一つと考えた場合、果たしてそれが正しい大人のアドバイスかどうかというと、私は(あくまで個人的にですが)全くそうは思いません。もし自分に子どもがいたら、そうは言わないと私は思います。

もちろん客観的な事実は伝えます。枠が小さい、つまり落ちる人間の方が多いということはあらかじめ言います。しかし、わずか1%でもチャンスが与えられているのならば、そのチャンスを大切にしなさいと、私は教えます。そもそも、一般受験のつもりで受験するならば、受験当日以前に校内に入って、ほとんど同じメンバーで試験を受けることが出来るんですよね? 試験方法は確かに違います。合格確率も違います。しかし、試験会場の「ロケハン」が出来るだけで、大きな大きなアドバンテージだと思いませんか?

28年も子どもたちの受験に付き合って来ると、受験生がいかにナーバスなのかが分かります。そして絶対的な「指導者」を求めたり、考え方・捉え方を諭し、勇気を持って受験会場へ向かわせる大人が必要なんだということが分かります。初めての試験会場は超がつくほど緊張しますが、2回目は意外なほど落ち着いているものです。トイレの位置を把握していたり、校内の雰囲気を知っているだけでも、気持ちの落ち着きが違います。そんな意味でも推薦試験を受けに行ってもいいくらいでしょう? もちろん内申点が足りない子は仕方ありませんが、落ちる確率が高いからやめろというのは如何なものかと思います。

さて。
この推薦試験で実施されている集団討論。
もちろん、面接や作文がありますから、これだけで合否が決まるわけではありませんが、一体何を主眼に実施されているのでしょうか。ヒントは、受験生に配られる「東京都立高校へ入学を希望される皆さんへ」という、東京都教育委員会が発行する冊子にあります。あれ、入試方法や期日ばかりを見ていて、ちゃんと読んでいる生徒・保護者は少ないのではないでしょうか?

その冊子に、集団討論についてこう書いてあります。

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コミュニケーション能力や協調性、思考力・判断力・表現力などを評価します。 与えられたテーマについて自分の考えを明確に述べることができるか、複数名の受検生同士が協力して一つのテーマに関して論理的に議論を進めて、結論を導くこと ができるかなどを確認します。 
 
「『集団討論』ってどういうものなのかな・・・?」「受検という場面だし、初め て会った他校の生徒と一緒にできるかな・・・?」と、心配する人もいるかも知れません。ですが、学級活動の時間に「学級や学校の生活を見直そう!」「合唱コンク ールを成功させよう!」などの話合いをしたこと、国語などの教科の授業の時間に 皆で意見交換をしたことがあると思います。そのような経験を生かし、『自分自身 の考え・意見をしっかりともつこと』『相手の考えを理解した上で、自分の考えを 的確に相手に伝えること』などを大切にして臨んでください。 

『集団討論』の形態には、「面接官が司会役となって議論を進めていく形」や「受検生だけで自主的に議論を進めていく形」があります。どの形態で行うかは、各学校 が受検生の状況などを踏まえて決めることになります。
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いかがですか?
最初に「コミュニケーション能力や協調性」が来るんですね。そして「複数名の受検生同士が協力して一つのテーマに関して論理的に議論を進めて、結論を導くこと ができるか」と書いてあるんです。この部分をよく理解しないとおかしなことになります。

学校や塾、様々な場所で練習会が行われているかと思いますが、中には自分の意見をどんどん言い、時には反対意見を出す相手を論破し、そのグループの中で一番になることで合格を勝ち取れるという趣旨の練習、つまり「ディベート」の練習になってしまっているところがあるそうです。しかし、「複数名の受検生同士が協力して一つのテーマに関して論理的に議論を進めて、結論を導くこと ができるか」とハッキリ冊子に書いてあるので、おそらくディベートを求められているのではないように思います。

つまり、5〜6名のグループで協力し合いながら、意見集約を図り、一つの結論を導き出すことが出来るかどうか、協調性があるか、自分の意見を他人にわかりやすく伝えるというコミュニケーション能力があるか、そういうところが大切なのであって、自分の意見がいかに正しいかを証明するというディベートはおそらく入試の趣旨から外れるのではないかと思われます。

毎年、我々の練習会に参加する生徒や保護者から、「学校で言われていることと真逆だ」「他所では全然違うことを言われた」というお声を多数頂きます。が、あくまで我々が関わる180名程度のデータですが、私たちの練習会でのアドバイスを参考にされた方の合格率は高いです。ある塾では全員合格などという話も出ていました。

私たちが正しいことをしているとか、何やら秘密の情報を持っているとか、そういうことではないんですね。ある意味、「原理主義」というか、都教委が発行するパンフレットにある趣旨に沿って考えて練習をしているだけなのです。リテラシーの問題。忠実に東京都教育委員会が言ってることを守ってみただけなんですよ。いかがでしょうか。

もちろん、だからと言って全員が合格するわけでなし、確かに基準が不明確な入試でもありますし、期待しすぎは禁物です。でも、我々受験屋は、入試を行う側が何を求めているんだろうか?という理念的なものまでよく考えます。東大入試の現代文などは、毎年「受験生へのメッセージだなぁ」と思って読みますし、何を意図して出題して来るのだろうか?という点は本当に深く考えます。

ですから、都教委が何を思って集団討論をやらせているのか?という点も考えます。
もちろん、都教委に確かめたわけでもなく、誰かにもらった情報があるというものでもありませんよ。あくまで、このパンフにはこう書いてあるよね?という、純粋な読み取り。そこから毎年のデータを積み上げてみると、見えて来るものがあるということなのです。

都立高校はこのほか、各学校で「求める生徒像」というのを提示しています。是非受験生の皆さんは、この「高校が求める生徒像」をもう一度読み直して見てはどうでしょうか? 偏差値と内申点で「お前はこの辺のレベル」という選び方ではなく、もう一度自分が選択した学校が、自分に何を求め、どんな生徒になってほしいと思っているのかを読み返して見て、そのために出来ることも思い巡らせて見る必要があるように思います。 

都立高校推薦入試を受験し、集団討論を行う皆さんは、もう一度討論の仕方を考えてみてはいかがでしょう? みんなの意見を集約して、一つの結論を導き出す、その協調性やコミュニケーション能力の試験だと私たちは位置付けていますが、どうでしょうかね? そのほかの細かい部分については、練習会の参加者に「講評」としてお話したいと思います。