2017-08-09-14-59-01親が「しでかしたこと」って、子どもに一生残るんだなぁって思うことがあります。よく「一生言われる」ってやつです。

私も生徒たちの面白エピソードを山ほど抱えているので、
「是非結婚式に呼んでくれ、スピーチで話したい」
「いや、呼ばれなくても勝手に行って話してやる!」
と脅かすので、勘弁してくださいっていう教え子が何人もいます(笑)

これも「一生言われる」ってやつですが、まぁそれほど大きなエピソードってのは、ずーっとその子の人生につきまとうものです。私のような、笑える爆笑ネタならともかく、逆に苦しい記憶や悲しい記憶、恐怖にも似た記憶、怒りの記憶など、ネガティブな記憶も「一生恨まれる」類になります。とりわけ、その相手が「親」であると、もうそれは一生縁が切れるものではありませんから、ずっと記憶に残りますし、ずっと言われることになります。
 
先日も、もう二十歳超えた女の子が、幼いの頃の記憶が原因で調子が悪くなってしまって苦しんだという話を聞きました。まぁそれは極端な例だとしても、思春期によくある「お父さん嫌い」「お母さん嫌い」って話は、やっぱり親御さんが何かやらかしてしまって、それを子が一生「忘れない」って思ってるケースが結構あって、その子の人生を変えてしまったり、その子の人生を台無しにしてしまったりすることがあるんだってことを、やっぱり子育て中の親御さんは含んでおく必要があるんだろうなぁと思います。

よくあるのは受験中の心無い一言ってやつです。「お前の努力が足りないからこうなったんだ」「あんな学校に払うお金は無駄だ」「誰に似たんだ?」なんてのはもってのほかなのですが、これらは意外にも親に言われて傷つく言葉「ワースト3」です。毎年どれかを親から言われたって子が出て来て、受験生が親を嫌う原因になる言葉です。

「成績伸びないんなら塾の費用は無駄だ」というのもよく聞く話。これも、塾をサボったりやる気がない子ならまだしも、頑張って努力はしているのになかなか結果に結びつかなくて苦しんでいる子にこの言葉を投げてしまうのはマズイわけです。でも、こう言ってしまう親御さんは少なくない気がします。「お金が無駄」というのはほぼ禁句です。どんな種のお金でも「無駄」と言ってしまうと、「私に掛けるお金は無駄だと思っているんでしょう?」と、完全に親の信頼を失います。そして、「一生言われ」ます(笑)
 
さて。私の「一生言われる」話。
私は、小学生の頃、数少ない「家族旅行」で箱根に行きました。我が家の家族旅行の思い出は小学生の頃に3回だけ。箱根と那須と岐阜の明治村。以上です。旅行が大嫌いな父だったので、とにかく出不精。だから家族旅行をアテにしていられず、小5の頃から友達と遠出を始めてしまったので、中学生以降は家族旅行はなく、私は私で勝手にどんどん旅に出ていました。
 
箱根にはその「一生言われる」思い出があります。
箱根旅行の際に「彫刻の森美術館」を見たいと思って入り口まで行ったにもかかわらず、父は、
「こんなもの見るのに入館料が高い」
と言って引き返して来たのです。美術や芸術には一家言あった父なので、そりゃ確かにそういう父からすれば「大したことがない」美術館だったのかもしれません。
「美術館の前まで行って行かないなんて!」
と母は怒っていましたが、結局、
「帰るぞ!」
と入り口でUターン。見ずに帰りました。

その直後に母の実家で箱根へ行ったという話をしたところ、祖父に「彫刻の森、素晴らしかったでしょう?」と言われて父の立場がなかった、というオチまで付いている話です。入り口まで行って入らなかったのよ!と親戚中にバラされて(笑)、父も本当にやりにくそうでした。

まぁ、40年も前の話をいまだに言われるんだから、親の話ってのは「食い物の恨み」じゃなくても、怖いものですね。
 
で、それがケチのつけ始めなのか、とにかく箱根にいい思い出が無いのです。
学生講師時代の塾の教室旅行でも行きましたが、酒に酔って騒いだ思い出しかないし、大学時代に行った彼女とはあっという間に別れるし、行きたいと思う紫陽花の時期にはなぜか必ず行けないし、行ったのに大涌谷のロープウェイが改修工事中だったってこともあったり、何せ妻と行くたびに必ず険悪になるし。だいたい疲れるし(笑)
 
今回、1日、講習中日でお休みを頂いた日にふと思い立ってロマンスカーで気分転換に箱根へ行ってみたのですが、途中、登山鉄道の中で「大涌谷の火山ガス濃度が基準値を超えてロープウェイが運転中止になった」というアナウンスがあるし、「じゃぁ山のホテルへ行ってランチでも食べよう」と思ってバスに乗り換えて行けば、ランチタイムを終えてしまってラウンジでお茶しかできないし、仕方ないので箱根湯本まで戻って「初花そば」で自然薯の蕎麦でも食べようと思ったら何と定休日だし。アホみたいに暑いのに箱根登山バスはエンジンかけないでクーラーの全く効いていないバスの中に乗客をすし詰めにするし。外人ばっかりで大混雑だし。妻とはもう何もかもが不発に終わるので険悪になるし(笑)ちょっと気晴らしに来たのに、全然気分転換にもならずに、かえってストレスを抱えに来ちゃったようなもの。二人でしょんぼりして、上野東京ラインで逃げ帰るように戻って来ました。トホホ…
 
きっと、もう私の人生の中で「箱根」って場所はケチがついちゃった場所なんだなぁと、人生半世紀にして気づいた気がします。あの時から、もう箱根は私にとっては鬼門なんでしょうね。これだけ行っていい思い出が何一つないってのも驚くべきことです(笑)
 
ということで、もうきっと二度と箱根には行かないと思う、というか結構「もう行かない」って心に決めたのでした。

さよなら、箱根(笑)