29根津に住んでいた頃には、藤澤清造の「根津権現裏」という作品を読みました。

目と鼻の先に「往来堂書店」という素晴らしい書店があって、行くと必ず「欲しい本」があるという凄い本屋さんなのですが、ここに並んでいたのが「根津権現裏」でした。

根津権現とは、「根津神社」のこと。根津神社は「権現造」の傑作と言われ、国の重要文化財に指定されています。つつじ祭りで有名ですが、私は幼い頃、一時期祖父母の家に預けられていたので、祖父が何度かつつじ祭りに連れて行ってくれました。根津神社は祖父との思い出の場所。そして、そのまさに「権現裏」に一時期住まい、その頃に根津神社で結婚式を挙げました。だから、本当に縁深いというか、祖父が全て導いてくれたような気がします。

そんな根津を離れ、現在は反対側へお引越し。
こちらもまた、いろいろな「文化財」がある土地です。

正岡子規が暮らした「子規庵」があったり、「ねぎし三平堂」があったり、渥美二郎さんが参拝後に寅さんの役をもらったという「小野照崎神社」があったり。

そんな中、ふと、実はちゃんと読んだことがなかった江戸川乱歩の「陰獣」を読みました。
江戸川乱歩といえば、多くの人にとっては「少年探偵団」でしょう。私は小学校の図書館にあった少年探偵団シリーズを全巻読み切った子でした。 今は、

https://www.poplar.co.jp/pr/shonentanteidan/

で文庫で発売されているようですね!

TVでも、天知茂が明智小五郎に扮し、「美女シリーズ」などで土曜ワイド劇場の常連でした。かなり怖かったなぁ。でも、夢中で見たクチです。

そこで、ふと、そういえば初期の頃の、かなり陰気な作品に(笑)「陰獣」というのがあって、確か舞台がこの辺りではなかったかしら?と思い出しました。そうなると気になってしまって、ちゃんと読んでいなかった作品なので、改めて読んでみたのです。

内容は、「ネタバレ」になってしまうので言及しませんが、それにしても犯人と思われていた大江春泥が住んでいたと思われる街が「上野桜木町」!

その前後に、この春泥が引っ越して回ったのが「谷中初音町」「根岸」「日暮里・金杉」と、モロに地元の町名が出まくりです。下手すると土地勘すらあります(笑)そして、その引越しにも仕掛けがあるのですが、地元なので瞬時にその理屈が分かってしまうので、土地勘のない方よりも楽しめた気がします。
 
主人公寒川と小山田静子が逢瀬を重ねたのは「お行の松」近くの家となっています。
私の生活圏どころか目と鼻の先。犬の散歩道ですし、以前はお行の松のすぐ近くに教え子がアパートを借りて住んでいたこともあります。そんな近くが舞台。もっとも、乱歩の「D坂の殺人」のD坂とは、実際は「団子坂」だとされていますし、意外と知ってる場所が出てくるものです。

文学作品に出てくるような土地というのは古くから「文化」的な香りがするものです。以前も、「言問」の由来となる和歌の話も授業のネタとしていることを書いたことがありますし、弥生土器発見の地は根津のすぐ近くだという話も書きました。上野の地名の由来も。先日は書き写しノートの文章に「上野戦争」の話を書きました。やまほどネタが転がっている土地です。

一つ一つお話することで、子供たちにも地元に興味を持ってもらえたらいいなぁと思っています。