麻生大臣のスーツが35万円だと某テレビ局が批判をして、流石に世間から呆れられているという報道が流れていました。まぁ、大臣ともなると、あらゆる方面からいろんなことを言われて大変なものだなぁと思いますが、それも有名税なのでしょうか?(笑)

35万円のスーツ。果たして高いと見るか、安いと見るか。いや、妥当と見るか。言葉尻だけで考えれば、私など下手をすると2着目は半額!なんてスーツで乗り切っているところもありますので、1着35万円か、すげーな!と思いますが、国を代表してG20に出席する大臣が35万円のスーツで出かけるというのならば、もしかするとちょっと安いのかも?とか思います。政治家のみならず、大企業のトップのような方々は、決めどころだと100万とかするスーツを着ているものでしょう。そう考えると、言葉だけで35万円が一人歩きすると危険だなぁと思います。

私も昔、アルマーニのスーツが欲しかった時代がありました。仕事頑張って少し儲かったら、買ってやろうと思っていたこともありました。結局その夢は叶っていませんが、欲しかったのは1着45万円のものでした。まぁ、叶ってないところが私のスケールの小さいところなんですけどね(笑)

今やすっかり算数の先生ですが、実は長年私は国語を教えて来ました。論理的な読解をするようにとひたすら文法的正確さを求める授業をして来ましたので、正確に国語を把握できなかったり、意図が伝わらない表現については結構うるさく言う方でした。それは算数の授業でも生かされていて、私に算数を習った子は毎年、
「君たちは算数ができないのではなくて、国語ができていないから、問題文の意味を理解できていない。ゆえに、全然違うことを答えている。まず問題文を読め」
 と叱られるのが常になっています。

ただ、その国語の中で、特に私が重要だと言っているのは、「文脈」です。言葉というのは大変不完全な伝達手段であり、文脈によって全然違う意味になってしまうのです。言葉を商売にする人間は、絶対的にここの部分を理解し、言葉の不完全さを分かった上で運用する必要性があります。ここに欺瞞が存在すると、それは言葉に対する「裏切り」が生まれてしまうのです。

生徒たちにそれを伝える時、よくこんな話をします。

「馬鹿」という言葉。
何か失敗した友達に対して、「ばーか」と言い放てば、それは悪意に満ちた侮辱だから、それは「なんてこと言うんだ!」と叱られる。

でも、大好きな女の子に、「好きです」と告った時に、「もう、ばかっ!」って言われた時、怒りますか? 「馬鹿とは何だ!親にも馬鹿なんて言われたことないんだぞ! 俺は偏差値も高いんだ! 馬鹿とは何だ、馬鹿とは!」と怒り狂うでしょうか?(ここで大抵ひと笑い取れます!)

「馬鹿」
言葉だけ見れば、悪い言葉ですけど、使われる場面と、文脈によって意味合いが全然変わって来てしまうんです。だから、どんな文章でも、どんな会話でも、文脈を判断せず、出て来た単語や言葉だけを切り取って、その素材だけでいい悪いを判断したり、答えを見つけようとしたり、意味を判断しようとすることは、国語を何にも理解できていない、実にレベルの低い勉強しかできていない証拠なのです。ちゃんと文章を読んで、意味をよく考える。文脈を考えなさい。そんな話をよーくします。 

有名進学教室などで「国語ができなくて困っている」と相談すると、大抵は、「それはテクニックで何とかなりますから大丈夫です!」と返って来ます。では、そのテクニックとは何かというと、ほぼ100%「傍線部の前3行と後3行を読んで、それらしい部分を抜き出せ」といったようなやり方なのです。文全体の「文脈」やら、その文章の意味、さらにはセンテンスの意味をよく考えて、論理的に同意の部分を探すなどということではないのです。残念ながら、そんなやり方で成績を上げても、結局は根無し草ですし、張子の虎。それは「答えを探り当てる」方法かもしれませんが、国語力の養成にはなっていません。それは「勉強」ではないと思います。

35万円のスーツって話もそう。
馬鹿って話もそうです。

その部分だけを切り取って、いい悪いを判断したり、それが何であるかを考えたりすることは実に滑稽で愚かなことです。だって、前後の関係も、全体の中の意味合いも、何も分からないし考えていない。でも、ついついそこだけ見て考えたり判断しがちなものです。

私、東京に住むようになって、何の躊躇もなくタクシーに乗るようになりました。
「先生、贅沢ですね!」
「ああ、儲かってるのね!」
「調子に乗っているとダメになるよ」
と思われているのではないかな?とか思いますが、実は私にとってはこれは「節約術」です。

千葉で暮らしていた時は、車がなければそれこそ生きていけないような「車社会」で生きていました。近所のコンビニにも車で行くほどの車移動。でも、車はお金がかかります。車両本体の金額に、駐車場代、ガソリン代。これに自動車税、車検、高速代、その他タイヤ替えたりバッテリー変えたり、洗車したり、車内環境をよくしたりと、何かと維持費用がかかります。 まぁ、千葉の時代は、駐車場は自宅にあったので、駐車場台はかかりませんでしたが。

ところが、東京へ来てびっくり。駐車場だけで毎月35000円もかかるじゃないですか! これに車本体がかかって、ガソリン、高速、維持、税金ときたら、月平均5〜6万円、いやもっと出て行くじゃないですか? びっくりするくらいお金がかかります。東京で暮らし始めて1年も経たないうちに車は手放しました。

ところが、タクシーなら自宅からでも今なら650円、調子がいいと490円で来る時があります。このペースでタクシーに乗っても、月間35000円、50回以上タクシーに乗るか?と言われたら、そこまでは流石に乗らないでしょう? 1日もかかさず、往復タクシーに乗っても40回。流石にないです。とすれば、駐車場代にも満たない金額を交通費に使っていても、車なんて持つよりも全然節約できているわけです。ですから、あまり躊躇なくタクシーに乗るのです。車持っている方が贅沢ですし、裕福です。私は質素ゆえにタクシーで暮らしています。オレの愛車は日比谷線です(笑)

でも、タクシーに乗る=贅沢・金持ち、という言葉のイメージだけで判断してしまう方も多いものです。友人にそれとなく話すと、すげーな、金持ちだなとか言われますが、そんな友人たちは休日に愛車でドライブに出かけているわけです。そっちの方が全然贅沢で金持ちだから!と言いたくなりますね(笑)

言葉のマジックに踊らされない「リテラシー」を身に付けたいものですね。
子供たちにもそういう「言葉の力」を身につけて欲しいと思っています。

国語がだいぶ問題だという方。特に小学生。
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