夜遅い仕事ですので、私たちはよく「夕食難民」になることがあります。
仕事が終わって、お疲れ様と皆をと別れた後、夫婦で「晩御飯どうする?」というのがもう10年以上の会話になっています。

根津に住んでいた時には、自宅の真ん前に深夜までやっている洋食屋さんがあって、よく転がり込んでいました。マスターご夫婦にはよくして頂いていましたが、ビルの改装で残念ながら閉店。そのうち私たちも引っ越してしまいました。

台東区側に来て既に5〜6年になりますが、こちらはまだまだ色々店を開拓できていないように思います。なので、つい目の前の焼肉屋さんに飛び込んでしまったりするのですが、普段から「おかず不足」になりがちなので、救世主は「居酒屋」さんということになります。

実は引っ越す以前から知っていて、通っている居酒屋さんがあります。まだお酒を飲んでいた頃から行っていますから、10年以上のお付き合いにはなります。のちにお酒を飲まなくなっても、妻は少々飲む程度で、もっぱら栄養補給に立ち寄ります。質のいいお料理と前任の店長さんの接客に惚れ込んで行っていましたが、今の店長さんも本当によくしてくださる方。本当にホッとします。だから疲れた時や、落ち着いて食事したいときは足が向きます。

長く通っているので、私が行くと躊躇なくノンアルコールビールを出してくれますし、メニューにない巨峰ソーダを作ってくれます(笑) タバコを吸っていないお客さんの近くの席にしてくれますし、最後はちゃんと店の外まで送ってくれます。「ごちそうさま、おやすみなさい」と帰ると、やっぱりホッとしたいい気分になって家に戻れます。

さて。
そんな店長さんが先日、私たちが来るのを待っていたと言ってきました。 息子さんのことで相談があるので、一度塾へお邪魔したいと。ご自宅は遠いので、お子さんが桜学舎にという話ではないのですが、相談できる人が欲しかったようです。いろいろ聞くと、お父さんなりに悩みがある様子。いつでもどうぞ!ということになったのですが、当然お互い忙しい身。

ところが、またまた先日、お店に立ち寄ったところ、偶然にもお店がガラガラ。こんな日もあるんだね、というところから、すっかり息子さんの相談になりました。まぁ、それだけでも「いいお父さんだなぁ」と思って聞いていたのですが、なぜ急に息子さんの問題が出てきたかという話になりました。

「ある日、表でサッカーボール蹴ってたんですが、いつもとちょっと蹴り音が違ったんですよ」
「で、聞いても『うるせー』とか言って部屋に行こうとするので、追いかけて行って、オマエ何かあるだろ?言ってみろ!って突っ込んだら、急に泣き出したんです」

驚きました。
驚いたというか、スゴイ!
そのサッカーボールの蹴り音の違いに気づき、何か子どもの異変に気づいて声をかけられた、そのお父さんの感性は素晴らしいですよ、って私はものすごく褒めました(偉そうに!)。でも、その小さな変化を見逃さなかったから、今の悩みがちゃんと表に出てきたんですねって。

どうやらイジメや人間関係といったことではなく、何かとても勉強で悔しいことがあり、もっと早くからちゃんと勉強しておけばよかったという涙だった様子。そこで、親としてどういう支援がいいのか、というのがお父さんのお悩みでした。

いやぁ。
本当に、胸が熱くなりました。お父さん、すばらしい! 
私も、いろいろ知っている限りの事をアドバイスしました。とにかくモチベーションが継続するように頑張らせることや、急激には伸びないから、やってもできない時期があることも織り込み済みでとか、 あまりダメ出ししないでポジティヴな言葉を投げかけるようにとか。

下町の人間関係なんでしょうね。
でも、そんな風に声をかけてもらって、私たちも嬉しかったのは事実。人の役にちょっとだけでも立てるというのは、いいことですよね。

いいお父さんだなぁ。
仕事も大変で忙しいしょうけど、頑張って欲しいなぁと思いました。
そういえば、私の母も「なんでもお見通し」みたいな母でした。
子どもの小さな変化に気づけるのは、もう感性の問題みたいなところもあります。子どもの様子を観察したり、ちょっと気にかけるだけで全然違いますので、改めて心がけてみると意外な発見もありますよ。

是非試してみて欲しいなぁと思います。